2016年10月6日木曜日

「俺たちに明日はない」感想

(ネタバレを含みます)



監督:アーサー・ペン

「ビフォア・サンライズ」を観た時には、自分が演じるなら、とか、ある程度俳優目線で見ることができていたものが、この作品では完全に観客になってしまっていた。
それは自分自身が、まだ今まで自分が生きてきたものと程遠い時代背景、境遇、価値観の人間を演じるまでの俳優になれていない、想像力とかがまだまだ足りないということなのだと痛感させられた

勝手な見解
クライドは、ゲイなんだと思う。当時はゲイとかバイセクシャルは現代よりも異質なものとして見られていたから、「女が苦手」「ED」という表現をしたのかな?そう思ってみると、勝手に物語に別テーマができて、それは世界恐慌時代という大きな苦に比べれば小さなものかもしれないけど、世間の目とか誰にも言えない苦悩があってこういう人生になって、最後に性別とかそういうものを越えた男と女の愛の形ができたのかなってなんだか感動した。
二人がやっていることはドラマチックなことだけれど、物語は一つ一つのことをそう描くわけでもなく当然のように淡々と進んでいくので(そう感じたので)、その物語を追ってるだけのつもりだったのに途中からいきなり皆が人間にみえてきた。それまで遊びのようだった強盗が、逃げ続けなくてはいけないものだと少しだけ気付いたあの家のシーンからだと思う。少しずつ皆の人間性とか変化が見えてきて、最初共感できなかったはずの人たちを好きになっていた。
最終的には、ボニーとクライドも彼らを慕う人々も巻き込まれる人々も捕まえる保安官もボニーのママもモスのお父さんもみんな魅力的でまっすぐでそれぞれの正義とか愛とかがあって役割を全うしてるから、誰目線でみていいかわからなくなってきて…あのラスト。殺されるのはわかっていたけど、そのあとなんにも余計なことしない。
あれしかないよな、と思ってしまった。

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